22:10
駅から家に向かう途中のアーケード街に差し掛かろうとアーチを通り抜る。
中学の頃、同じクラスで、同じ部活の奴を見た。
そいつは、ローラーブレードに、ヘッドホン。
懐かしかったので、俺はベルを鳴らした。
・・・。無言だ。
・・・。ベルだけが響いたそのアーチの下は、再び静けさが戻る。
ローラーブレードは、にわかにスピードを上げる。
自転車はそれに、追いつこうとする。
久しぶりだな!元気でやってるか?そんな会話しているような不思議な気持ちになった。 無言の会話だ。
両者はどんどんスピードをあげ続け、 自転車のスピードがローラーブレードが追いつけない位になった時、 そいつは、スピードを落とした。
「こんな時間に何やってるんだよ。」
「あぁ。ライブの帰りさ。」
「誰のだよ。」
(絶対、もろアイドル系だと思ってやがる・・・)
「GARNET CROW さ。」
「あぁあ・・・。へぇ。 ファンなのか?」
「あぁ。そうさ。お前こそ、こんな時間になにやってんだよ。」
「毎日走ってる。体力づくりさ。」
(アーケードは出口が近づき、お互いは別れが近いことを悟る。) 「そうか。じゃぁ、またな」
二人は、またそれぞれ静けさの中に向かって行った。 夜の静けさの中の無言の会話に、すこし感動を感じ、 「あぁ、友達へ年賀状書こう。」そんな季節だと、改めて気付く